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MAGAZINE
STYLE OF MASHIRO

料理家/食育インストラクター和田 明日香
ASKA WADA
PART.2

作る人の心に寄り添うようなレシピを生み出し続ける料理家、和田明日香。平野レミの次男と結婚し、料理経験ゼロの専業主婦から料理家へと転身した。大きな変化を経験してきた彼女は、この「変化の時代」に何を感じ、どんなふうに語るのか。

片付いてないとか、触られたくないとか、一回全部取り払って、「誰が入って来てもいいよ」って。

「仕事の料理」と「家族のごはん」って、違いますか?

そうですね、モードが全然違う。ずっと同じことをしてるというよりは、割と切り替えてます。仕事の料理は、直接食べさせることがないので、とにかく仕上がりがおいしそうなものを作る。もちろん味については、たくさん実験して間違いのないレシピを提出するんですけど、撮影やテレビの収録用のものは「おいしそう」と思ってもらえないと作ってもらえないので。

たとえば、お鍋の撮影だったりすると、本当においしいのは野菜がクタクタになって「もう全部同じ色」みたいな状態。それを食べさせたいけど、撮影でおいしそうに見えるのは、違うんですよね。だから、撮るときは彩りを優先して、ほぼ生の白菜とかほぼ生の人参とかを並べるわけですよ。しかも、鍋の底にいっぱいタワシみたいな針金を入れて具材を固定する。スープも、あんまり色を濃くすると見えなくなっちゃうから、薄めに仕上げて。だから、仕事の料理と家族のごはんで、使ってる頭は全然違うと思います。
「家事ヤロウ!!!」はその合間みたいな感じで。見てる人に伝わらないといけないし、でもそれを実際に家族にも食べさせるしで、すごい大変なんですよ。

「家事ヤロウ!!!」のときは、ほぼリアルですか?

限りなくリアルに近いんですけど、本当にリアルで作り始めると、もう黙々と「炊飯器に負けないために口もきかずにせっせと作る」みたいになっちゃう(笑)。
やっぱり見る人のことは意識してますね。
レミさんなんか、もっとすごくて。レミさんは撮影で目玉焼きを作るとなると、目玉焼きのマグネットを持ってくるんですよ。写真に映える目玉焼きって、すごい難しいんです。黄身に白身がかぶらないように、かつ、淵がちょっとカリッと焼けてて、落とした時に黄身がちゃんと真ん中にくる。こういう目玉焼きができるのは奇跡に近くて。なので、実際に目玉焼きは作るんですが、うまくいかなかったら目玉焼きのマグネットを乗せる。ものすごくリアルなマグネットがあるんですよ。レシピは作ってみたいと思わせてなんぼですからね。

料理をもうしたくないって思う瞬間、あります?

毎週思ってます。木曜日。木曜日ですね。
金曜日は、できれば外食に行くって決めていて。外食できなかったとしても、もう土日は休みだからテイクアウトとかして子どもたちにもジュースを解禁してるんです。プチパーティーみたいな感じで、気が楽なんですよ。
木曜日は、「今日を乗り越えれば明日金曜日なんだけど……」という感じで。毎週木曜日は嫌です。鍋一つで作って、大皿にドカンと出せるような、焼きそばとか、丼率が高めですね。水曜日はまだ頑張れる。
キッチンに一歩足を踏み入れるまでがしんどいなってときは、音楽をかけて気持ちを盛り上げたりします。ゴリゴリのヒッピホップかけて、追い立てられるようにみじん切りしたりとか。

キッチンに他の人が立つのは、気にならない?

そうですね、今のキッチンはウェルカムな感じにしたくて。人が勝手に入ってきてる。片付いてないとか、触られたくないとか、一回全部取り払って「誰が入って来てもいいよ」っていうキッチンにしたかったんです。

レミさんと一緒にキッチンに立つのは緊張します?

以前は本当に嫌でした。料理してるとこを見られるのが嫌だった。
作ったものを食べてもらうなんてもってのほかだったので、前もって「死んだらお墓に供えるから勘弁してください」って冗談で言ってたぐらい(笑)。
でも、一回食べてもらったら、すごい喜んでくれて。「私はずっと人に料理を作ってきたけど、こんな風に家庭料理を作ってもらったことはない」って。レミさんのごはんを食べに来る人達ばっかりだったから、レミさんが誰かのごはんを食べるって事がないまま、生きてきたみたいで。「あ、それだったら食べさせてあげなきゃ!」と思って。今はもう、全然平気になりました。
一緒にキッチンに立つこともありますけど、レミさん危ないんで。なんか色々飛んでくるから、そういう意味では今も怖いです。包丁も投げたりするので(笑)。

昔から好きだった料理ってありますか?

母の作った煮物を、鍋を抱えて食べてました。無性に食べたい、みたいな味で。根菜と鳥の筑前煮みたいなやつですね。野菜がゴロゴロっとでかくて、人参とかゴボウとかレンコンとかが入ってて。レミさんに初めて食べてもらったのがそれなんですよ。母の味なら文句言われても悪いのは母だから、私は傷つかない、と思って。「実家の味です」って言って。そしたらすごい喜んでくれたので、二重に嬉しいですよね。お母さんありがとう、って。

今日が人生最後の日だとしたら、何を食べたいですか?

どうしよう。もう結局何も選べなくて、何も食べなさそう。
だって何食べても「あっち食べたかった」って後悔しません? なんかもうビールだけ飲めてたらいいかも。今まで食べておいしかったものを思い出しながら。自分が作ったごはんを家族が食べてくれるところを眺めながら、ビール飲んで死ねたらそれでいいです。

自分が作るものだとしたら、とん汁を作って、しみじみ「うまいなぁ」と思って死にたいです。
あ、悲しい気持ちになってきた。
やっぱり、家族のみんなが食べたいというものを作って、私はそれを見てますね。うん。

PROFILE

料理家/食育インストラクター和田 明日香 Aska Wada

料理家で食育インストラクター。東京都出身。3児の母。料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修行を重ね、食育インストラクターの資格を取得。各メディアでのオリジナルレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての活動のほか、各地での講演会、コラム執筆、ラジオ、CM、ドラマ出演など、幅広く活動する。2018年、ベストマザー賞を受賞。著書に『子どもは相棒 悩まない子育て』(ぴあ)。『和田明日香のほったらかしレシピ・献立編』(タツミムック)他。新刊『10年かかって 地味ごはん。』(主婦の友社)」も好評発売中。テレビ朝日「家事ヤロウ!!!」に出演中