東京オリンピックの体操競技で、日本女子選手として初めて、個人種目でのメダルを獲得。現役引退後は、次世代の選手を育てるために指導者として活動している。並外れた忍耐力と向上心を持つ彼女が、次に目指す道はどんなものなのだろうか。日々の暮らしから今後の目標まで、さまざまな質問に答えてもらったインタビュー。
実は最初は、粉の歯磨き粉に抵抗があったんです。もともと、「歯磨き粉にはうるおいが欲しい」というこだわりがあって。でも、使い始めたらすごく好きになりました。私は一年ほど前から歯列矯正のマウスピースをつけていて、その頃から口の中の粘りが気になるようになったんです。でも、MASHIROで歯磨きをするようになったら、すごく変わりました。
朝起きたときが一番違います。寝起きでも口の中がさっぱりしている。普段の生活でも、マウスピースをつけて過ごしていると、不快感が出てくるのを水でごまかしたりしていたんです。体操をしているときも、息が上がったときとかがすごく嫌で、おしゃべりしにくかったり。でも今はそれが、だいぶなくなりました。一回使ったらやめられなくなりました。
基本的には大学の体育館で体操の指導をしているので、午前中に来て練習をして、お昼の休憩をしたら、また午後4時ぐらいまで練習をして、帰宅します。選手だったときと違って、夕方からは少し時間の余裕があるんです。だから、家に帰ってから趣味のダンスをしたり、指導している選手たちの振り付けを考えたりしています。で、夜にお風呂に入って、寝る。一日中、動いていますね。
体を使うという面では一緒なのですが、選手のときは「練習時間だけ動く」という感じで、帰ってからは次の日に向けて疲れを取るために休む必要があったんです。お風呂に長く浸かったり、ストレッチをしたり、睡眠をひたすらとったり。もう明日に向けての時間が始まっている。選手だった頃はとにかく、疲れてしまって翌日に練習できないことが怖かった。でも今は、「一日を最後まで使い切る」という感じがあります。すごく疲れても、筋肉痛になっても、いいや! って。
スイッチのオンオフがはっきりしてきたかなと思います。以前は、練習の時間になると「選手としてのスイッチ」を入れて、とにかく頑張る。練習時間が終わったら、スイッチをプツッと切って、次の日に向けて体を休める、という感じでした。でも今は、いろんなスイッチがある気がします。
一週間が、あっという間で。以前は、「日曜日に試合だ」と考えると、その日が迫ってくるような感覚があったんです。今は、気がついたら一週間経っていて。私にとって、次のゴールがすごく先なので、時間の感覚も変わったのかなと思います。
日本の体操を強くしたい、という思いがあります。これまでは自分の目標を自分で叶える立場でしたが、今は、人の目標を叶えてあげる立場に変わりました。次のオリンピックで成果が出せるようにしたいなと思っています。8年から10年くらいかかるのかな、という感じですが、そこでもう一人のメダリストを出すことができれば、すごく嬉しいです。
オリンピックのときに、自分でメダルを獲れてすごく嬉しかったのですが、日本女子の個人で決勝に残った選手が、ほかに誰もいなかったんです。そのとき、「今後の日本女子があぶない!」と思いました。自分の学んだことを後輩たちに受け継いで、今後の日本女子が戦えるようになってほしい。個人の決勝で、同じ国の選手が周りに誰もいないっていうのが、寂しかったんです。次の世代の選手たちは、孤独を感じずに戦って来てほしい。そのために、次の選手を、一人、二人、三人……と輩出していけたらなって。頑張ります。
選手だった頃は、自分で自分の成果がわかるんです。できなかった技ができるようになったり、そういう、わかりやすい達成感がありました。今は、指導している中で、「自分の感覚を選手に伝える」という努力が必要になってきて。地道な努力が大切な領域だな、と思います。自分の頭の中にある感覚をそのまま言葉にしても、全然イメージできない選手もいるんです。そういうときは、別の伝え方を考えなければいけない。体の使い方に関する語彙力を増やしていくような作業です。
何気ない会話ってすごく大事なんだなと思っています。体操を見るばかりではなくて、選手と会話をすることで、どんな性格で、どんな考え方をしているのかを知ることができる。相手の個性を見つけていくんです。これまで指導してくださった先生たちは、やっぱりすごいなあと実感しています。私の場合は、選手たちと年齢が近いので、自分なりの指導方法を探っているところです。「ちょっとこういうふうに表現してみたら」みたいなアドバイスを気軽にできるのは、強みかもしれません。
正直、「あ、萎縮されてるな」という感じることもあります。オリンピックの日本代表選手に選ばれたという経歴も影響して「すごい人」というふうに思われちゃう。そう思ってもらえるのはとてもありがたいんですけど、もっと自分が選手の懐に入っていかなきゃいけないと思っています。
今大学で練習している子たちは、もう何年も一緒に練習してきた仲なので、「どうしたらいいですか」とか「こうしたいけど、いいアドバイスないですか」とか、いろいろ聞いてきてくれるんです。最近は、すごく若い選手たちが育ってきているので、かれらにとって相談しやすい相手として、どんと構えていられるような人になりたいです。
そうですね。選手の集中力をゆるめないための緊張感は大切かもしれません。集中力がないときって結構あぶなくて、怪我が起きやすくなるので。私自身、選手のときはずっと怪我が多かったです。人によっては、怪我をしたことで恐怖心が芽生え、以前はできていた技ができなくなったり、怪我のショックで練習もできなくなったりします。だから、選手に対しての接し方や距離感はすごく難しい。
怪我をしないことが一番いいのですが、怪我によって強くなることもあるんです。足首を怪我したときは、腕の強化をしたり。あとは、「今はちょっとおやすみしろって、神様が言ってるんだな」と考えて、しっかり体を回復させたり。私はそういうときに少しステップアップできた気がします。怪我をしたときにどう行動するか、は、選手に問われるところじゃないかなと思います。