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MAGAZINE
STYLE OF MASHIRO

フォトグラファーヨシダ ナギ
NAGI YOSHIDA
PART.1

写真家。アフリカをはじめとする少数民族やドラァグ・クイーンなど、自身にとっての「ヒーロー」を撮影し続けている。独自の感覚や生き方をクリアに言語化したエッセイ群も好評だ。高い評価を得た写真家でありながら「写真は好きじゃない」と語る彼女は、日々、どんなことを考えているのか。

とにかく知りたい。かれらのことを知りたい。
きっと「好き」の熱量でしかなかった。

MASHIROの感想と、撮影中の歯磨きエピソードなどもあれば、ぜひ教えてください。

MASHIROは、試してみたらすごくスッキリした感じだったので、それが気に入って使ってます。旅行に行くときは、歯磨き粉と歯ブラシはお気に入りのものを持っていきますね。アフリカでは、歯磨き用の木、というか枝があって、現地の人はそれを使っています。歯を磨くのにちょうどいい木らしくて。味は特にないです。慣れていないと、口の中がモソモソするので、私はあまり好きじゃないんですけど……。

毎朝のルーティンってありますか?

特にないかな……? あ、いつも、お香を焚きます。私は、「よくわからないけど、とりあえず何かに祈る」という傾向があって。その延長で、お香を焚くんです。朝と寝る前に一回ずつ。「祈った、大丈夫!」という頭なんですね。根が他力本願なので、運や神様に見放されたら大変だと思っています。撮影で海外に行くときは、「海を渡ったら神様は見ていない」と思っているので何もしていないです。海外にいるときは、祈っている余裕はないので、とりあえず仕事を頑張る。

エッセイの中で、「写真は好きじゃない」という一節があって驚いたのですが……好きじゃないんですか?

好きじゃないです。もともと、好きでも嫌いでもないものを仕事にしようと思っていました。
小さい時から絵を描くことがすごく好きだったので、家族や先生からは「絵の仕事をしたらいい」ってずっと言われていたんですけど、「仕事にしたら自由にできなくなる。だから絵はぜったいに仕事にしない」と決めていたんです。写真家になる前に、イラストレーターになったんですけど、案の定、本当に嫌いになりました。

今ではもう、描きたくないですか?

落書き程度ならいいかな。でも、「じゃあ描いて」って言われると、嫌ですね。すごくお金を積まれたら描くかもしれないけど。
絵については、小さい頃に「喋って思いを伝える」ということがあまり上手ではなかったので、感情表現として描いていたんだと思います。そうやって自由に描いていたものが褒められた、というのが、多分イラストレーターの仕事をするようになった理由です。でも、いざ仕事にして、頼まれて描くようになったら褒められなくなって。そういう商業的な感覚がよくわからなかった。お題があって、「こういうふうにしてほしい」と相手が望むものを描く、ということがなかなかできなかったんです。私にとって、絵は、頭の中にあるものを描き起こすような作業だったので。

写真の仕事で、「こういうふうにしてほしい」「こうあってほしい」という期待を、被写体に対して抱くことはありますか?

被写体に対しては、ないかもしれないです。例えば私が商業カメラマンで、いろんなものを撮る人であれば、そういう期待や意図があったかもしれません。でも私が撮っている人たちって、基本的に私が興味を持っている人たちだから。自分がすごいと思っている人たちに会いに行けるのが嬉しいので、「こうあってほしい」とかはないです。私の中ではずっと、「ヒーロー」というテーマがあるんです。自分がヒーローだと思う人たちに会いに行く、っていう、大きなテーマ。

アフリカの少数民族の方々を撮影するとき、同じ衣装を身につけていますが、きっかけはありましたか?

小さい頃にテレビでアフリカの人々をみて、「大きくなったらこれになる」って思ったんです。それからずっと、アフリカ人や少数民族が好きで、追いかけてきました。私にとっては本当に、仮面ライダーとかセーラームーンみたいなヒーローの姿に見えているんですけど、周りの人にはそうは見えていないようで。当時はモヤモヤしていました。でもやっぱり、私にとってはずっとヒーローなんです。だから、ヒーローが着ている衣装があるなら、自分も着たいと思うんですよ。「マイケルジャクソンがステージで着た衣装を着れるよ」って言われたら、みんなきっと「着たい」と思う。それと同じ感覚なんです。寒そうに見える服でも、着てみたら「こんなに保温性があるんだ」とか、着ることでわかることっていっぱいある。好きな人たちがどんな生活をしているかが単純に気になるから、同じ格好をする。

被写体とコミュニケーションするための「撮影のテクニック」ではなく、むしろ「体験する」ことが先にあるんですね。

そうですね、とにかく知りたい。かれらのことを知りたい。今でこそ仕事の関係で、「限られた時間の中で距離をつめる」っていうツールとして機能してもいるけれど、根本には「好きな人と同じことをしたい」という気持ちがあります。私は写真の勉強もしていないし、技術があるわけではない。それなのに写真を褒めてもらえたっていうことは、きっと「好き」の熱量でしかなかった、と思うんです。だから、好きじゃない人を撮った瞬間に、バレるんだろうなって。撮ってはいけないと思ってます。

好きじゃない被写体を撮るような依頼は、受けないのですか?

全部、断ってます。「大金を積まれたら考える」って言ってます。大金が入ったら、それをアフリカに行く資金にできるから。

PROFILE

フォトグラファーヨシダナギ

1986年生まれ フォトグラファー 独学で写真を学び、
2009年より単身アフリカへ
以来アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影、発表。
唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され
2017年日経ビジネス誌で「次代を創る100人」へ選出
また同年、講談社出版文化賞 写真賞を受賞