美容や化粧品について、独自の視点と思想で綴るビューティライター、AYANA。コラムやエッセイの執筆はもちろん、商品開発、コンサルティングも行う。さまざまな「美」がありえるこの時代に、彼女は何を思うのだろうか。
「これをしておけば大丈夫」という顔をひとつだけ用意しておく場合は、それにしておけば安心な部分がある反面、そうじゃない時は不安になってしまいますよね。だから、もとからいくつかバリエーションを持っておくように心がける。
色々な自分の顔に慣れてくると、「ここに持っていかなきゃいけない」という気持ちが減っていくと思うんですよね。まずは身近な人の前でバリエーションを作ることから、試してみるといいかもしれないです。
あるいは、自分や環境の変化に合わせて変えていくのも、楽しいと思うんです。
オススメなのは、鏡を見る時間を増やすこと。とはいえ、自分の顔だけをただ見続けていても、なんというか……思考がショートしますよね(笑)。限界があるというか。
そこで、自分が「好きだな」と思う女性やメイク、雰囲気などのサンプルを集めて、宝箱みたいなものを作っておくんです。その宝箱の中身と、自分との間で共通点を探す。好きなものを分析して、「こういうことが好きだ」をクリアにするんです。それから、「じゃあそれを私に置き換えた時には、どういうことが真似できるかな」って考える。
はい。私の場合は、文章も同じで。分析したり理解するためのきっかけが「好き」なんです。「なんで好きなのか」を掘り下げることで、書く対象の解像度をあげていく。
書いていて、「なんか違うな」という風に思うことは、もちろんあります。その時は、読み返したり、リライトしたり。でも私は、考えて考えて文章を書くタイプというよりは、考えるのと文章を書くのが同じスピード、というタイプかもしれないです。もしかしたら、文章の方が先かもしれない。書き終わってから、「こういうこと考えていたんだ」と思うことも多いんです。
クライアントワークの文章については、さすがに、もう少し分析しながら書いています。
だからあんまり、「どうしても書けない」みたいなことはないかな。
書く対象のことを好きになりきれない場合は、苦しいかもしれません。なんとかして好きになれるポイントを探します。でも、頑張って見つけようとすると、それはそういう文章になってしまって、それはそれでよくないので、なるべく自然に好きになれるよう努力します(笑)。
かつては、美容ライターや美容家の肩書を持つ方々に対して、すごくキラキラとしたイメージを抱いていました。「女性としての魅力」を追求している、というか。そういう雰囲気の中で、自分が「ビューティの世界の人だ」と公言するのはちょっと違うな、おこがましいなと思っていたんです。
ここ5年ぐらいですかね、化粧品に関する記事のお仕事が増えてきて、読んでくださる人も増えて。そんな時に友人から「なんでAYANAは、肩書きにビューティがついてないの」と言われたんです。「つけないと、絶対にもったいない」って。
そこで最初は、すでにある「ライター」の肩書きとは別に、「ビューティ〇〇」のような肩書きをもう一つ作ろうかな、と考えたんです。でも、別の友人に相談したら「肩書きが多いと、何をしているのかわかりにくくなる。仕事を頼むときに躊躇してしまうかもしれない」と言われて。確かに! と思いました。
それで、これからも文章で仕事をしていきたいという気持ちもあって、「ビューティライター」という肩書きになりました。
はい。すごく良かったと思っています。
まず、自分が美容の人間だって自覚が生まれたんですよ。「いまさら?」という感じかもしれないんですけど。それまでは「私は裏方の人間だから、きれいなものを生み出すのは全力でやる。だけど別に、自分自身の美しさを磨かなくてもいいよね」というスタンスだったんです。
でも、ビューティライターという肩書きをつけることで、それが変わりました。ファンデーションの仕上がりを聞かれたときに「私は使ってないから分からない」は通用しないな、と思って。いろんなものを試すようになりました。
もともと自分の顔も、好きじゃなかったんです。写真も苦手で。「撮るのは好きだけど……」という感じだった。でもやっぱりそういうのはダメだなと思って、プロフィール写真を撮っていただいたり。今まで以上に美容に対して能動的になりました。
もう一つの良かったことは、「ビューティライター」という肩書き一つにしたけれど、それ以外のお仕事をいただけていることです。わざわざ肩書きにいっぱい書かなくても、化粧品の企画開発やコンサルティングの仕事を任せてもらえている。だから、今後もビューティライターでいきたいなって思っています。アドバイスしてくれた友人にはすごく感謝してます。